工芸ルネッサンスプロジェクト”WAO”

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“未来の伝統”で世界中の人々をあっと言わせる

“未来の伝統”で世界中の人々をあっと言わせる(仮訳)

生駒芳子氏は2008年までの10年間、『ヴォーグ』、『エル』、『マリ・クレール』といったファッション雑誌の日本版の編集を務めていた。ヨーロッパの有名ファッションブランドについては熟知しており、彼らが精巧に作られたモノに対して敬意を抱くということをよく理解している。だから、2011年の3月に東日本大震災が東北地方を襲った時、東北のために自分に何ができるか、彼女にはすぐ分かった。東北には最高の職人達がたくさんいるからだ。

イタリアの象徴とも言える、あるブランドと協力して、生駒氏は東北へ赴き、2011年3月11日の津波で壊滅的な被害を受けた沿岸部から100キロも離れていない福島県の会津若松市で、100年以上の歴史を持つ「坂本乙造商店」という名高い漆器製造業者を探し出した。

そこで生駒氏が、そのブランドのクリエイティブ・チームと漆器職人達との橋渡し役となり、限定版のハンドバッグに使用するためのモダンなバックルを作ることとなった。

そのバッグは大ヒットとなった。

「私達はこうした伝統工芸とコラボしたバッグを3種類立ち上げましたが、どれもみな完売ですよ。」と生駒氏は笑顔で語る。

実は、日本の職人技を世界にうりこみ注目させるという生駒氏の試みは、震災前からあった。震災の6ヶ月ほど前、彼女はWAOと呼ばれる革新的なプロジェクトを開始していた。

「WAOとは、和生=日本の伝統の再生、という意味の組み合わせで名付けました」と生駒氏は説明し、付け加えて、英語の感嘆の声である「ワオ!」のように発音されるのだと説明する。

「日本には様々な伝統工芸品がたくさんあって本当にそれは宝物なんですよ。それなのに、値段が高すぎたりして、今の人々の日常生活から締め出されてしまっているのではないかということが、このプロジェクトのアイデアのベースにありました。」

未来の伝統

この問題に取り組むためにWAOが最初に試みたのは、日本全国の職人達が自らの工芸品を展示できるような大規模な展示会を開くということであった。さらに重要なのは、その展示会が海外を巡回するということ、そして、「未来の伝統=FUTURE TRADITION」というテーマに沿って注意深く構成されるということだった。つまり生駒氏と協力者達は、現代の生活においても今日的な意味を持ち、未来において新たな伝統となりうると思ったアイテムだけを展示品として選んだのであった。

その計画には、とくに若い世代の職人達から大きな反響があった。彼らの多くはすでに、社会において変化しつつある自分達の役割に意識を向けているところであった。坂本乙造商店のRie Sakamoto Collectionを手掛ける坂本理恵氏はWAO展示会への参加者であるが、生駒氏の目標は多くの点で自分自身の目標とも合致しているのだと説明する。

「私たち自身のふるさと会津の町で、私たち自身の手でモノづくりを続けること、それはみな私たちが考えてきたことです」と彼女は言う。「そして、私たちは人々にWOW!と言わせるようなモノを作りたいと思っていました。」

展示会で最も人気が高かったアイテムの一つは、南部鉄瓶として知られているものだが、南部鉄瓶では思いもよらないようなポップな色づかいの一連の鋳鉄の鉄瓶だった。震災と津波の被災地である岩手県の盛岡市で創られたショッキングピンクの鉄瓶は、昨年ニューヨークとパリで展示された際、直ちに売り切れたのであった。

東日本大震災の直後は、WAOプロジェクトの規模を縮小しなければならないのではないかと心配だったと生駒氏は振り返る。が、実際には、その全く逆だった。

「震災前にも、伝統工芸を見直そうという関心が生まれつつありましたが、地震に見舞われた後は、それが一層強くなりました」と彼女は言う。「本当に、原点に戻ろう、日本人であるとはどういうことかを考えるきっかけになりましたね」。

このようにして、生駒氏は日本各地のデパートで展示会の開催を続け、本当に「未来の伝統」になりそうな、より革新的で創造的な日本の工芸品を展示することができたのである。

生きることに対する新たな展望

おそらく驚くに当たらないことだが、2年前に日本の東北沿岸部を襲った地震と津波は、世界の人々にも深い影響を与えた。

生駒は震災から間もない頃に、ヨーロッパのある有名ブランドのクリエイティブ・ディレクターが訪ねてきたことを思い出す。

「震災は自分の将来の展望を変えたと彼女は私に言いました。『私達はこれまで傲慢すぎた』と彼女は言ったのですが、自分達は資源が無限にあるかのように商品を開発し消費してきた、という趣旨のことを言いたかったのだと思います。」

Aizuwakamatsu

このように、有名ファッションブランドが日本の職人達に働きかけ、生駒氏のように熱意のある人が橋渡し役を務める、というのは珍しいことではないのかもしれない。伝統工芸が長年培ってきた忍耐、細部への注意、美といった価値観は、人々に、生きるということへの新たな展望を与えてくれるだろう。

Produced by The Japan Times